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インフルエンサー契約書の作り方|ブランドを守る必須条項チェックリスト

更新:2026年10月監修:株式会社ビスコット(2002年創業・美容PR)読了:約10分

インフルエンサーPRのトラブルの多くは、「どこまで頼んだか」「どこまで使ってよいか」が曖昧なまま進んだことから起きます。本記事では、発注側(ブランド)が契約書に入れておきたい条項を、短い条文例つきでチェックリスト化しました。

この記事の結論 個人のインフルエンサーに業務を委託するなら、フリーランス法により取引条件の明示が義務(業務内容・報酬額・支払期日など)。そのうえで、ブランドを守るには投稿回数・掲載期間/二次利用/PR表記/薬機法と事前確認/修正・削除/炎上時の解除の6点を最低限、書面で決めておく。報酬は納品(給付の受領)から60日以内の支払期日を設定する。費用の全体像は美容インフルエンサーPRの費用相場から確認できます。
免責:本記事は一般的な情報提供であり、法的助言ではありません。条文例は考え方を示すための短い例で、そのまま使える雛形ではありません。実際の契約書は、個別の取引内容に合わせて必ず弁護士等の専門家に確認してください。

1契約書が必要な場面と形式

契約は口頭でも成立しますが、インフルエンサーPRは成果物(投稿)が公開され、ブランドの信用に直結する取引です。条件を書面に残さないと、投稿内容・掲載期間・二次利用の範囲をめぐって認識がずれやすくなります。取引の規模に応じて、次のいずれかの形式で条件を残します。

形式向くケース注意点
業務委託契約書(個別契約)高額案件・二次利用あり・競業避止あり条項を案件ごとに調整できる。締結に時間がかかる
基本契約+発注書(個別条件)同じ相手に継続して依頼する/アンバサダー共通条件は基本契約、回ごとの条件は発注書に分ける
発注書+利用規約(同意取得)多数のマイクロ・ギフティング型施策規約への同意の証跡を残す。重要条件は発注書側に明記
代行会社・プラットフォーム経由キャスティングを外部に任せるブランドの契約相手は代行会社。下流の契約に条件が反映されているか確認

依頼ルートの違いは依頼方法の比較、会社選びはインフルエンサーマーケティング会社の選び方を参照。

2フリーランス法で求められること

2024年11月1日に施行されたフリーランス・事業者間取引適正化等法(特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律)は、従業員を使用しない個人(または一人社長の法人)に業務を委託する取引に適用されます。個人で活動するインフルエンサーへの投稿依頼は、多くの場合これに当たります。

「投稿後にブランド側の都合で報酬を下げる」「修正を際限なく求める」といった進め方は、契約上のトラブルにとどまらず、法律上の問題になり得ます。修正回数・検収基準を契約で先に決めておくことが、双方を守ります。

3必須条項チェックリスト

発注側が契約書(または発注書・規約)に入れておきたい条項の一覧です。次章で、条項ごとの考え方と短い条文例を示します。

4条項別のポイントと条文例

以下の条文例はすべて考え方を示すための例です(甲=ブランド、乙=インフルエンサー)。実際の文言は取引内容に合わせて専門家と調整してください。

① 業務内容・納品物

「何を・どの媒体で・どの形式で」を具体的に書きます。曖昧だと、意図と違う投稿でも検収を拒みにくくなります。訴求ポイントやNG事項は別紙(投稿ガイドライン)にまとめると管理しやすくなります。

条文例(例)

乙は、甲が指定する商品(以下「本商品」)について、別紙「投稿ガイドライン」に従い、乙のInstagramアカウントにおいて投稿(以下「本投稿」)を行う。

② 投稿期間・投稿回数・掲載期間

投稿の実施期間と本数・形式に加え、投稿を削除せずに掲載しておく期間を定めます。ストーリーズのように自動で消える形式は、ハイライト保存の要否も決めておきます。

条文例(例)

乙は、20XX年X月X日からX月X日までの間に、フィード投稿1回及びストーリーズ投稿1回を行い、フィード投稿は投稿日から6か月間、削除又は非公開にしないものとする。

③ 二次利用(範囲・媒体・期間・対価)

投稿の写真・動画・文章を広告やLP、EC、店頭POPに使うなら、媒体・期間・地域・改変の可否・クレジット・独占の有無・対価を定めます。投稿報酬に含めるのか、別料金なのかも明記します。詳しくはインフルエンサー投稿の二次利用を参照してください。

条文例(例)

甲は、本投稿の写真・動画・文章を、甲の公式SNS、甲のECサイト及びMeta社の広告配信において、投稿日から3か月間、日本国内に限り利用できる。改変はトリミング及びテロップの追加に限る。本条の対価は第X条に定める報酬に含まれる。

④ 競業避止

同時期に競合品のPR投稿が並ぶと、訴求の信頼性が下がります。ただし範囲が広すぎる・期間が長すぎる競業避止は、相手の活動を過度に制限し、合意形成も難しくなります。対象カテゴリと期間を絞り、必要なら対価に反映させます。

条文例(例)

乙は、本投稿の投稿日の前後各1か月間、甲が別紙で指定するカテゴリの他社商品について、有償のPR投稿を行わないものとする。

⑤ 秘密保持

発売前の商品情報、価格、キャンペーン内容などが事前に漏れないよう、秘密保持を定めます。解禁日(投稿可能日)とセットで書くと運用しやすくなります。

条文例(例)

甲及び乙は、本契約に関して知り得た相手方の秘密情報(発売前の商品情報を含む)を、相手方の事前の書面による承諾なく第三者に開示し、又は本契約の目的以外に使用してはならない。

⑥ 報酬・支払時期・源泉徴収・インボイス

金額(税込/税別)、支払期日、支払方法、請求書の要件を定めます。個人への支払いは、報酬の性質によって源泉徴収が必要な場合があります。また、相手が適格請求書発行事業者かどうかで仕入税額控除の扱いが変わります。実務はインフルエンサーへの支払いと税務で整理しています。

条文例(例)

甲は、本業務の対価として金XX円(消費税別)を、本投稿の確認(検収)完了日の属する月の翌月末日までに、乙の指定する口座へ振り込む。法令により源泉徴収を要する場合は、これを控除して支払う。乙は、適格請求書発行事業者である場合、登録番号を記載した請求書を発行する。

※支払期日は、給付の受領日から60日以内に収まるよう設定します(フリーランス法)。

⑦ ステマ表記(PR表記)の義務

2023年10月1日から、景品表示法の告示により、事業者の広告であることが分かりにくい表示(いわゆるステマ)が不当表示とされました。規制の対象は広告主である事業者(ブランド)です。インフルエンサーに広告である旨の明示を義務づけ、確認できる体制を契約で作ります。表記の付け方はステマ規制のPR表記の付け方を参照。

条文例(例)

乙は、本投稿が甲の依頼によるものであることを一般消費者が明瞭に判別できるよう、「広告」「PR」等の表示を、投稿の冒頭など分かりやすい位置に行い、各SNSが提供するタイアップ投稿機能を使用するものとする。

⑧ 薬機法・表現ガイドラインの遵守と事前確認

化粧品の効能効果は承認・届出の範囲(化粧品なら56項目の範囲)を超えて表現できず、医薬品医療機器等法の虚偽・誇大広告の禁止は「何人も」が対象です。インフルエンサーの表現でも問題になり得るため、ガイドラインの提示と、投稿前の原稿確認を契約に入れます。表現の基準は薬機法・ステマ規制の表現ガイド、化粧品の効能効果56項目を参照。

条文例(例)

乙は、本投稿の表現について、医薬品医療機器等法、景品表示法その他の関係法令及び甲が提示する表現ガイドラインを遵守し、投稿予定日のX営業日前までに投稿原稿を甲に提出して確認を受けるものとする。

⑨ 修正・削除・差し替え

事前確認での修正回数、公開後に問題が見つかった場合の修正・削除の対応期限、ブランド都合の差し替えの費用負担を決めます。修正を無制限に求める書き方は、相手との関係悪化や法令上の問題につながるため避けます。

条文例(例)

投稿前の修正依頼は2回までとする。甲は、公開後の本投稿が法令又は表現ガイドラインに抵触するおそれがあると合理的に判断した場合、乙に修正又は削除を求めることができ、乙は通知受領後X営業日以内に対応する。

⑩ 炎上・不祥事時の解除

インフルエンサー側の不祥事や炎上で、ブランドとの関連を断つ必要が出ることがあります。解除事由、投稿の削除、報酬の精算方法をあらかじめ定めておきます。長期契約では、フリーランス法の予告義務(30日前)との関係も確認が必要です。

条文例(例)

甲は、乙が法令違反、公序良俗に反する行為その他甲の信用を著しく毀損する行為を行ったと合理的に判断した場合、乙に通知のうえ本契約を解除し、本投稿の削除を求めることができる。この場合の報酬の扱いは、既に履行された業務の割合に応じて協議のうえ精算する。

⑪ 損害賠償・責任範囲

どちらかの違反で損害が出た場合の賠償範囲を定めます。個人のインフルエンサーにとって無制限の賠償は受け入れにくいため、上限(例:報酬総額)や故意・重過失の扱いを調整するのが一般的です。

条文例(例)

甲又は乙は、本契約に違反して相手方に損害を与えた場合、直接かつ現実に生じた通常の損害を賠償する。ただし、故意又は重大な過失による場合を除き、賠償額は本契約の報酬総額を上限とする。

⑫ 権利帰属・肖像権

投稿の著作権は原則として制作したインフルエンサー側にあり、写っている本人には肖像権があります。ブランドが使うには、著作権の譲渡か利用許諾が必要です。著作権を譲渡する場合でも、翻案権など(著作権法27条・28条の権利)は契約で特に明記しないと譲渡した側に残ると推定されるため注意が必要です。実務では「権利は乙に留保し、③の範囲で利用を許諾する」形が多く見られます。

条文例(例)

本投稿に係る著作権は乙に留保される。乙は、第X条(二次利用)に定める範囲での甲の利用について、著作者人格権及び肖像権を行使しないものとし、写り込む第三者がいる場合は乙の責任で同意を得る。

5アンバサダー契約(継続契約)の報酬設計

アンバサダーのように数か月〜1年単位で継続する契約では、単発案件とは別の注意点があります。

活動量と報酬を連動させる

月額固定にする場合も「月あたりの投稿本数・形式」「イベント参加の有無」を明記し、活動量が変わったときの見直し方法を決める。

成果報酬は計測方法まで

クーポンやアフィリエイトリンクで成果報酬を付ける場合、計測ツール・集計期間・対象外の取引を明記する。

競業避止は期間とセットで

契約期間中の競合PR禁止は、相手の収入機会を狭める。範囲を絞るか、報酬に反映させる。

更新・終了のルール

自動更新の有無、更新時の条件見直し、終了時の投稿・二次利用素材の扱いを決める。6か月以上なら中途解除の予告(原則30日前)に留意。

アンバサダー施策の全体像と報酬の考え方はアンバサダーマーケティングとはを参照してください。

6締結の流れ

1
条件の整理(社内)

目的・投稿内容・本数・掲載期間・二次利用の要否・予算・表現ガイドラインを整理する。

2
打診・条件提示

依頼内容と主要条件(報酬・二次利用・競業避止)を最初に提示し、受諾の可否を確認する。

3
取引条件の明示・契約締結

フリーランス法の明示事項を満たす発注書・契約書を交付し、電子契約等で合意の証跡を残す。

4
原稿確認・投稿

契約どおり事前確認を行い、PR表記・表現をチェックしてから投稿してもらう。

5
検収・支払

投稿を確認して検収し、請求書(インボイス要件)を受領。源泉徴収の要否を確認し、期日内に支払う。

6
掲載期間・二次利用の管理

掲載期間と二次利用の期限を台帳で管理し、期限切れの素材を差し替える。

7よくあるトラブルと予防

広告転用で揉める

「SNS投稿だけのつもりだった」。→二次利用の媒体・期間・対価を契約に明記。

投稿がすぐ消える

キャンペーン中に投稿が削除・アーカイブされた。→掲載期間を定める。

PR表記の漏れ

表記がない、または見えにくい位置にある。→表記の方法と確認手順を契約に入れる。

効能表現の逸脱

使用感の範囲を超えた効能をうたってしまう。→ガイドライン提示と事前確認。

修正の応酬

修正依頼が重なり、投稿が遅れ関係も悪化。→修正回数と期限を先に決める。

支払遅延

社内の支払サイトが長く、60日を超えてしまう。→契約前に支払期日を確認・調整。

?よくある質問

インフルエンサーとの取引に契約書は必ず必要ですか?
契約は口頭でも成立しますが、個人のインフルエンサーに業務を委託する場合、フリーランス法により取引条件(業務内容・報酬額・支払期日など)を書面または電磁的方法で直ちに明示する義務があります。トラブル予防のためにも、契約書または発注書+利用規約で条件を残すことをおすすめします。
DMのやり取りだけで契約として十分ですか?
取引条件の明示はメールやSNSのメッセージ機能などでも行えるとされていますが、明示事項が漏れなく含まれ、後から確認できる形で保存されていることが前提です。二次利用や解除条件などは、発注書・契約書にまとめて合意する方が安全です。
二次利用は契約書に書くべきですか?
書くべきです。投稿の著作権・肖像権は原則インフルエンサー側にあるため、広告やLPに使う場合は媒体・期間・地域・改変の可否・対価を定めます。
炎上や不祥事が起きたら契約を解除できますか?
解除条項を定めておけば、所定の事由が生じたときに解除や投稿削除を求められます。6か月以上の継続契約を中途解除する場合は、フリーランス法上の予告(原則30日前)との関係も含め専門家に確認してください。
代行会社を通す場合、ブランドは何を確認すればよいですか?
ブランドの契約相手は代行会社になるのが一般的です。代行会社とインフルエンサー間の契約に、二次利用・PR表記・表現ガイドライン遵守・修正削除対応が反映されているかを確認します。

契約・表現チェック込みで、インフルエンサーPRを代行

起用条件の整理から、PR表記・薬機法に配慮した表現確認、二次利用の許諾管理まで一気通貫で対応します。お問い合わせはこちら。

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参考:公正取引委員会「フリーランス法特設サイト」(https://www.jftc.go.jp/fllaw_limited.html)/消費者庁「ステルスマーケティングに関する景品表示法の告示(令和5年10月1日施行)」/著作権法27条・28条・61条2項/国税庁 タックスアンサー No.2792「源泉徴収が必要な報酬・料金等とは」

※本記事は一般的な情報提供であり、法的助言ではありません。条文例は説明のための例示で、そのまま使用できる雛形ではありません。法令・制度は改正される場合があります。個別の契約書作成・確認は必ず弁護士等の専門家にご相談ください。